ITショックは続く――成都の街
2018年2月7日
成都の空港を出て、いきなり「現金レス社会」から試練を受けました。 レジ台にQRコードが映し出されていて、支払いは「Wechat」。 1本7.0元でミネラルウォーターを買おうとしたが、10元を渡したところ、女子店員は「小銭がないから、Wechatで払ってもらえないか。こちらがWechatでお釣りの3元を払い戻してもいいよ」と。
Wechatで支払うことはニュースで聞いたことはありますが、まさに自分が飛行機を降りた瞬間、その試練を受けるとは。
果てに、20元を渡して3本を買って、店は1元おまけしてくれたのです。
驚きが続きます。 行き先の近くに駐車しました。 車を降りた私の目に入ったのは、シェアカーでした。 車の後部に回ってみると、「扫码」(QRコードを読み取る)をして、「一元乗車」を楽しもう、と書かれている文字。 「たったの一元でこの車が使用できるのだ」と、目を疑いました。 使ってみようかと興味津々でしたが、目を覆って混雑した道をくぐってきたばかりの私には、運転する度胸なんか到底ありませんでした。
仕事の合間に、近くの古い民家町を案内してもらった。まずは映画に出も出てくるような「茶館」。 一壺30元、フルーツなどを付けると、二人で100元と少々高目ですが、店の雰囲気を見回ると、その味わいは値段以上の物があった。
客はいっぱいだった。 古代のままの、或は古民家風のままのおもてなしが好きなのは私だけではなかったようです。
お洒落な書店発見。 古風に改造された書店内外ですが、経営者向けの成功哲学の本、儒教や仏教の本、どちらかと言えば教養書中心。 欧米諸国や日本に関する書籍・国際関係の書籍も多かった。 店内を見て回る人達はそれらの本に似合いそうな身なりと表情だったが、買っていかれるのは、サイドコーナーにある三国志ゆかりの人形や栞など手芸品。
食事はこの巨大な硯玄関の店にした。 四川鍋を目指したが、30分以上歩いて探してみたが、どこもかしこも、室内はみな満席。 「庭の席なら」と勧められたが、零天下の真冬で、「露天宴会」はさすがに引いてしまった。
とその時、ある店の玄関にあるこの巨大な硯を見かけた。 店内に吸い込まれていった。 幸いにも、硯の魅力に負けないぐらいの四川鍋の店だった。 さらに幸運にも帰られる客がいて、室内で空いた席に案内された。
以前経験した四川鍋とは、まず鍋の形が違っていた。 「太極」の形ではなく、素朴な四角いの鍋を真ん中から鉄板で仕切られ、「白湯」と「赤湯」に分けられているものだった。
「白湯」はキノコと野菜で仕込まれた「湯」で、程よく濁りのついた「湯」に、優しそうな白ネギが浮き上がり、野菜の鮮味とキノコの香りが相まって、見るに食欲を誘い出されてしまった。
「赤湯」は正直言って、ドキドキ期待しながらも、怖かった。 しかし、食べだすと、手が止まらなかった。 「辛―い」と言っては、何かを掬って口へ運ぶ。 運んでは「辛―い」と絶叫。果てに汗ダクダク、庭の露天席にしなかったことを後悔した。
中国のあちこちで四川鍋を食べた経験があり、「このくらいの辛さは平気」と自負していた。本場はやはり違う。 決して刺激的な辛さではない。 むしろ穏やかな柔らかい感じの辛さ、受け入れやすい、嵌りやすい。 食べるほど辛さが増す、辛さが増すほど手を差し出してしまう。欲と辛さとの戦いみたいなものだが、最終的には欲が辛さに完敗した。 口を開けるにも恐怖が走る完敗ぶりだった。
ところが、ビールはうまかった。 「雪花」という少し濁りのかかったもので、飲むと爽やかな喉越しだった。 泡も程よく漂い、優しい味わい。
この1本は80元? とびっくりしたが、「原酒」らしかった。 お洒落なデザインは見事に冬の寒さを包み込み、味わいの深さをさらに演出してくれた。 味わいにも値段にもピッタリのデザインだった。